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スポーツのチカラに引き寄せられて

スポーツが持つチカラ、スポーツを愛する人が持つチカラに引き寄せられて
実現する様々な人たちのインタビュー。そこには SPORTS FIRST な精神が息づいています。

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スポーツは、五感をフルに活用するためのひとつの手段
村井絢子(GOLDWIN)

2015.03.31

スポーツが苦手な私が『スラムダンク』に影響され、中学からバスケ部に。

私は北海道で生まれて、大学から新潟に行きました。美術系の学科に入って大学院まで6年間、美術を勉強していたんです。
小学生の頃は漫画の『スラムダンク』が全盛でしたので、中学に入ってからバスケ部に入部しました。もともとスポーツは全然できなくて、逆上がりも縄跳びの二重跳びもできない小学生が『スラムダンク』と出会って感動して、中学、高校、大学の途中までバスケ部を頑張ったんです。365日の中で360日は部活をやっていたんじゃないでしょうか(笑)。

そこで継続してやりとおせたことが、今でもすべてのベースになっている気がします。仕事においてもそうですね。部活によって、かなりの忍耐力を培うことができたのではないでしょうか。

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団体スポーツから、個人スポーツへ。大学院ではスキー部で頑張りました。

そして大学では立体デザインを学びました。純粋に好きなものを目指したいと考えて出した答えがアートの道だったんです。大学時代は個展を開いたり、作品を作ったり、4年間では足りなくて大学院に進学しました。

スポーツの話をすると、大学院在学中まで、はじめはバスケ部だったのですが、途中からアルペンスキー部に変更したんです。競技スキーというのはこの時が初めてでしたね。アートも追求しながら、寝る時間を削ってトレーニングもして、スキーでインカレにも出場しました、一番下のクラスでしたけど(笑)。そうして大学院を卒業して、新卒でこのゴールドウインに入社することになったのです。

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自分のライフスタイルになり得ると思い、ゴールドウインに入社しました。

社会人になるにあたって、自分のやりたいことをあらためて考えてみた時に、やっぱり何かモノを作る仕事がしたかったんです。モノ作りがしたい。その上で、私はスポーツも好き、着るものも好き、じゃあスポーツのウエアが作れたらすごく幸せなんじゃないかなと思い、ゴールドウインを希望しました。私自身はアウトドアを追求してきたわけではありませんが、ザ・ノース・フェイスなどを見ていて、自分のライフスタイルになり得るだろうと思えたんです。

入社できて1年目は店頭のディスプレイなどVMD担当のアシスタントとして全国を回りましたが、2年目からはザ・ノース・フェイスの企画チームに入れていただきました。もちろん苦労もしてきましたが、経験を重ねて、少しずつクリアになってきました。

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山を走るなんてド変態(笑)だと思っていた私が、トレランにのめり込みました。

そんな私がトレイルランニングにのめり込むようになったのは、はじめは完全に仕事の一環としてでした。
とはいえ、山を走るなんてド変態だと思ってました(笑)。最初はものすごくキツくて、もう二度とやるものかと思いましたが、つらい中で見た景色って感覚がシンプルに研ぎ澄まされているのか、すごく印象に残るですよね。普通に歩いて登る景色とは違って、もう1回あの山の中でこの景色を見てみたいって思ったんです。その繰り返しで今に至っていると思っています。

多い時には月に2~3度大会に出ていました。はい、私もド変態ですね(笑)。そんな中、ある大会で足の甲を疲労骨折してしまいました。楽し過ぎて、走り過ぎて、身体が悲鳴を上げたんですね。そこからはレースの数も調整するようにしました。
自分では、素質は全然ないと思っているんです。ただ好きで走っているだけなんです、本当に。自信は、いまだにありません。胃腸を壊すかもしれないし、足を壊すかもしれない。何が起きるかわからないのがUTMF(ウルトラ・トレイル・マウント・フジ)のようなウルトラレースなんですよね。その都度でてくる問題にどう対処するかというのが、このレースのおもしろさであり奥深さであると思っています。2013年と2014年は、4月のUTMFを走り、そして8月の末にUTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)でモンブランを走ったんです。

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朝焼けにモンブランが照らされる瞬間。その風景の中を走りたかったんです。

4カ月くらいの間に二つの大きなレースを走るのは大変でした(笑)。鍛えた身体では80kmくらいまでしか走れなくて、あとは気持ちなんです。いつも大会に出たいと思う理由は、単純に、そこの山の景色が見たいからなんですよね。その中を走れたら人生観も変わるんじゃないかって。大会の精神性も素晴らしいですし、その風景は日本では絶対に見られないもので、その中を走りたいと思う冒険心と好奇心が私のきっかけになっています。

昨年のUTMBも本当にキツかったのですが、ちょうど朝焼けにモンブランが照らされる瞬間を見て、泣きながら、ここでやめちゃうのもったいないなと思ったんです。周りのランナーにサポートされながら、写真を取ろうと思ったら気温が低過ぎて、携帯電話のカメラが曇って撮れませんでした(笑)。

山で体験したことを、もちろん仕事に生かそうと思いますが、私が意識しているのは自分がフィールドで使ったものを信じ過ぎないということです。私の主観に寄り過ぎることなく、多くの人に評価される商品を作りたいんです。
この先も、トレイルランニングは続けていくと思います。こんなに続けられると思うスポーツに出会ったことはなかったですから。競争ではないスポーツの精神性、お互いを助け合うという世界観が好きなんですね。
私にとってスポーツとは競争ではなく、人にとって大事な五感をフルに活用するための、ひとつの手段だと思っています。

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  2. 村井絢子(むらいあやこ)
    1982年生まれ、北海道出身。札幌西高等学校卒業。2008年3月新潟大学大学院美術科を卒業後、同年4月にゴールドウイン入社。2009年4月よりザ・ノース・フェイス事業部勤務。趣味はトレイルランニングと美術館巡り。マイブームはキャンディクラッシュ。

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