山好きの父と一緒に、子どもの頃から山に登っていました。
父が山が好きだったので、私も小学校の低学年の頃から地元の福岡の山に登っていました。登っていて、気持ちよかったことを覚えています。その後はバスケット部にも入っていました。でも高校が自宅から遠かったこともあり、勉強をみっちりやるクラスでもあったので(笑)部活からは離れました。大学から東京に出てきて、レザークラフトの職人をしていたんです。レザーとシルバーの物っていうのが、当時の自分にはカッコよく思えて、工房に入りました。自分で営業して、企画して、制作して、3年ほどその仕事をしていましたね。
アウトドアウエアの素材に興味を持って、ゴールドウインへ。
ゴールドウインとの出会いは、友人に誘われて始めたクライミングでした。前に1回だけやったことがあったのですが、おもしろかった思い出があり、行ってみたらやっぱりおもしろかった。その間にも、もともと山登りが好きで、富士山やハワイの山とかに登っていたんです。
そんな中で、自分がレザー職人をやっていて、マテリアルに興味を持っていたんですね。アウトドアのウエアってすごくいろんな素材を使いますから、その観点からも興味を持っていたんです。そしてクライミングをやるようになって、ザ・ノース・フェイスというブランドが、考え方とか作り方とか、自分から見て一番しっかりしているなと思い、受けさせていただきました。僕は趣味を仕事に生かしたいと思うタイプの人間なので、クライミングが好きだということは自分の強みになると思ったんです。
ごはん、ボルダリング、お風呂、みたいな感じです(笑)
山は自分にとって大切な趣味であり、クライミングがもうライフスタイルになっていますね。私が取り組んでいるのは、その中でもボルダリングというカテゴリーで、自分の身体ひとつで岩に登るっていうジャンルです。実際の岩はボルダリングジムにあるような模造したものと違って、中にえぐれているんですよね。そのちょっとしたくぼみというかつぼを使って登っていくんです。
危険なもののように見られがちですが、実際に亡くなってしまうという人はそういませんし、下にボルダリング用のマットを敷くなど、安全管理をしっかりやって楽しむスポーツなんです。スポッターっていう相方がいて、下にいて手を出して、落ちてきた腰を支えて必ずマットに落とすという役目を負っています。あくまでスポーツなんですよ。日常の一部になっていますので「何でやるのか?」と聞かれても困ってしまいます。ごはん、ボルダリング、お風呂、みたいな感じです(笑)。やらないと、もう逆に不安を感じてしまうくらいですね。岩男という名字も、なんだか狙っているみたいですが、本名です(笑)。
ぜんぶ遊びだと思って、楽しく登っているだけなんです。
一度ハマると、もう一生ぬけられない。クライマーというのは、そういう生き物なのかもしれません。
山にいる時間で、自分を取り戻したり、楽しかったり。楽しいから続けているというシンプルなことだと思います。仕事がオフの時にも、ほとんど家にはいません。テレビも捨ててしまいました。
ただ私は自分のことを「山屋」だとは思っていないので、そんなにストイックに追求しているわけじゃないんですよ。ぜんぶ遊びだと思って、楽しく登っているんです。
ボルダリングって、ストリーム系ですからスノーボードやスケートボードと同じ感覚なんです。極端にいえばTシャツと短パンでも楽しめるスポーツですから。もっと間口が広がればいいなあと思っています。もちろん突き詰めればグレードというのがありまして、10級から始まって一番上は6段まであります。僕は、今3段です。ここからが無限地獄なんです(笑)6段って、日本では3人しかいないんじゃないでしょうか。
ボルダリングもダイビングも、重力を楽しんでいるんです。
会社の仲間たちと登ったり、クライミングジムに行ったりすることもありますね。ザ・ノース・フェイスのお店で働いている以上、最低でも山くらいは登っていないとダメだと思っていますから。お客様からの信頼も、私が山に登っていることを知っていただければ、すごく高くなりますよね。そういう意味では、自分が山に登っていることも、無駄になることもないと思います。
スポーツは、人生を楽しくするひとつの要素なのだと思います。そして仕事も、人生を楽しくするもう半分の要素です。僕は夏には海でダイビングも楽しみますし、ボルダリングもダイビングも重力を楽しんでいるんです。山と海でいろんな感じ方ができて、生きているんだなあと実感しています。
- 岩男浩平(いわおこうへい)
1979年生まれの34歳。入社は2009年。 現在はザ・ノースフェイス日本橋髙島屋の店長として勤務。 勤務後はジムクライミング、休日は登山や外岩に出かける日々を送っている。 ちなみに、名前はもちろん本名。