甲子園の県予選、準決勝で負けた日のことが忘れられません。
小学校で野球を始めてから、どんどん夢中になっていきました。中でも、高校時代に夏の全国高校野球選手権茨城大会の決勝で負けたことが強烈な印象で、ずっと自分の中に深く残っています。正しく言えば、思い返そうというつもりは一切ないのですが、あらためて振り返ると、どうしても忘れられないシーンになってしまうのです。
私の高校は、当時の県内では甲子園に最多出場を誇る名門でした。3年生の最後の夏も優勝候補。準決勝の相手は優勝候補で、事実上の決勝戦でした。エースとして臨んだあの夏のこと、あの一日のことは、今でも鮮明に覚えています。
チームメイトとともに結果を得る。野球も仕事も、同じです。
仕事をするようになって、私の性格や人格を形成する上で、野球というスポーツをやっていたことは非常に大きいと思います。150kmもの豪速球を投げ込んでバッターを抑えられるピッチャーではなかったので、当然チームメイトとともに結果を得ようということになります。もちろんそれぞれの個を強くすることでチーム力は上がりますが、勝つためにはもっと大切なことがあるという気持ちでマウンドに立っていました。それはそのまま今の仕事にも生かされていると思っています。
ゴールドウインに入社して、前職時代にはなかったクラブ活動があることに、驚きました。まず自分たちがスポーツを楽しみ、仕事に生かすという考え方が実践されている。それって、本当に大きなことだと思ったんです。仕事とスポーツをつなぐ架け橋があり、そこにみんなの幸せな生活があるんですね。
相手ではなく、自分自身に勝つか負けるかを楽しむスポーツへ。
私も会社の野球部で活動していましたが、ちょっと目をケガしてしまい、チームスポーツですから周囲に迷惑を掛けてしまうこともあり、野球からは一度退きました。それからは、トレーニングの中でランニングを取り入れていたこともあり、一人でできて、自分の足だけで走れて、景色が見える楽しさもあり、ランニングや登山をするようになりました。
1対0で勝つか負けるかというスポーツから、違うスポーツを始めてみようと思ったのは、何事もそうだと思いますが、チャレンジする気持ちからです。3年前のハセツネの大会に出場した時には、レース途中に左ひざをケガしてしまい、完走できなかったんです。その悔しさが、あの高校時代に負けたあの日と重なり、きっとこれは自分自身に勝つか負けるかを決めるスポーツなんだと認識しました。
次のUTMF(ウルトラトレイル・マウント・フジ)には、できればぜひ出場したいと思っています。また、いつの日かもう一度マウンドに立てるように、野球人として努力したいとも思っています。
心の鮮度をクリアに保つためにも、スポーツは欠かせません。
仕事とスポーツの関係で言えば、自社で売る商品の機能を、自分で実際に試すことにより自分自身の実体験で商品について語れるのが大きいと思います。またメンタルの面から言えば、例えば山を登っていると「まだ上りが続くのか」と思うことがよくあって、気持ちが落ちそうになるその浮き沈みの波の中で、それを乗り越えられる強さというものを、ランニングの中で得ているような気がします。そして何より、心の鮮度をクリアに保つために、やっぱりスポーツは欠かせません。つまり、心のリセットですね。当然、身体が疲れている時には走ろうという気持ちになるのも難しいですが、逆に走らないと疲れがたまると感じることも多いです。
人と人を結ぶスポーツの楽しさを、世界へと伝えていきたい。
スポーツが、自分にとって毎日の生活の中にあること。ライフスタイルの一部になっていること。仕事でも、あるいは仕事でなくでも、人と人を結びつけてくれるものがスポーツではないでしょうか。UTMFという大きな大会が実現できるのも、会社の利益のためではなく、世界から集まる選手たちに、また観客の皆さんに、富士山をはじめ日本の良さを伝えるためのものでもあると思うんです。そういう意味でも、この先、世界の方々にゴールドウインのブランドを発信し、その商品の良さや、この会社の人の素晴らしさを伝えていく仕事がしたいです。そもそもスポーツが人に与えてくれる楽しさや強さは、国境を越えているのですから。
- 木南拓也(きなみたくや)
埼玉県鶴ヶ島市生まれの32歳。(2014年1月10日現在)2009年入社。前職は旅行代理店でスポーツイベント関連の仕事をしていた。入社後、販売二部にてザ・ノース・フェイス、ヘリー・ハンセンブランドなどの登山専門店営業を担当し、現在は海外部でゴールドウインヨーロッパに赴任中。3児の父として、仕事も子育ても家事も楽しく奮闘。